🏫 静かに忍び寄る「文化副業」という名の誘惑

こんにちは、マナブです。
私は62歳の元教員で、今は塾講師をしながら副業にも挑戦しています。
温泉巡りや妻との居酒屋めぐりが日々の楽しみですが
近年、SNSやLINEで目にする“副業広告”が気になって仕方ありません。
ある日、こんな投稿が目に入りました。
「硯(すずり)を買うだけで在宅収入が得られる」
「文化的で安全、初心者でも大丈夫」
正直、最初は「おもしろい発想だな」と思いました。
ところが調べていくうちに
これは文化を利用した投資詐欺だと分かったのです。
🪶 硯投資ビジネスの“優雅な仮面”
表向きは「日本文化を支える副業」。
しかしその仕組みは、次のような流れになっています。
- 高額な硯(20〜80万円)を「資産価値が上がる」と説明して販売
- 「転売サポート」を名目に追加登録料や管理費を請求
- さらに「会員を紹介すれば報酬が出る」と勧誘
- 結果、紹介による報酬がビジネスの中心になる
つまり、実際には硯の販売ではなく“人の紹介”で回る構造。
文化品という名のもとに、古典的なマルチ商法が仕組まれていたのです。
💰なぜ「硯」だったのか?
硯は日本文化の象徴であり
“知的・高尚・安全”というイメージを持たれやすい商品です。
この「信頼されやすい性質」が、悪用されていました。
曖昧な価格設定
硯には明確な市場相場がありません。
職人名や石の産地を持ち出せば、いくらでも価格を上げられます。
「この石は滅多に採れない」と言われれば、素人は判断できません。
金融法の抜け道
硯は“美術品”として扱われるため、金融庁の監督外。
つまり、詐欺のようでも法的に立件されにくい構造になっているのです。
ターゲットは40〜70代
「伝統」や「文化」に関心がある世代は
詐欺グループにとって格好の標的。
“心の隙”を突くビジネスモデルと言えるでしょう。
👩🎨 松本悠里という“幻想の広告塔”
硯ビジネスでよく見かけるのが「松本悠里」という名前です。
SNSでは、次のような投稿が多く見られます。
「在宅で始めた文化副業で人生が変わりました」
「私はただ硯を買っただけ。それが収入になるなんて」
柔らかく上品な文体で、どこか信頼できそうな印象。
しかし実際には、同じ写真・同じ文面のアカウントが複数存在。
つまり“松本悠里”は架空のマーケティング人格であり
人を安心させるために作られた“広告上のキャラクター”なのです。
こうした仕組みは「ストーリーマーケティング」と呼ばれ
人の感情を利用して信頼を作る代表的な手口です。
🧠 心理的トリックの巧妙さ

硯副業は、心理的にも非常に計算されています。
① 共感ストーリーの演出
「借金で苦しかった」「主婦でもできた」といった体験談を見せ
“私もできるかも”と思わせる。
② “無料”を入り口にする
最初は「登録無料」「説明会だけ」などの形で誘い
その後に「限定プラン」「特別販売会」と金額を釣り上げていく。
③ 現物を使った安心演出
硯は実際に届くため、
「詐欺ではない」と思い込ませやすい。
しかし、再販市場が存在しないため
最終的に“売れない資産”だけが手元に残ります。
📉 資金の流れを見れば一目瞭然
硯副業の構造を簡単に整理すると、次の通りです。
1️⃣ 販売会社が硯を高額販売
2️⃣ 登録料や管理料を徴収
3️⃣ 会員紹介で報酬が発生
4️⃣ 新規会員が減ると全体が崩壊
つまり、硯の価値ではなく人の勧誘で利益を作る仕組み。
この時点で“投資”でも“副業”でもなく
連鎖販売取引(マルチ商法)に近い構造です。
⚠️ 「合法」と言い張る詐欺のカラクリ
この手のビジネスは、運営者がこう言います。
「現物を渡しているから詐欺ではない」
確かに硯は届くし、契約書もある。
しかし、そこに“再販ルート”も“需要”も存在しない。
そのため、「合法を装った搾取モデル」と呼べます。
さらに契約書の隅には
「転売保証は一切いたしません」と小さく書かれているケースが多い。
つまり、リスクを全て購入者に押しつけているのです。
🌱 副業として見るときの本質
私は教員として長年生徒を見てきて思うのです。
「楽して成果を得よう」とする気持ちは誰にでもある。
けれど、学びも仕事も“理解と継続”がなければ成果は出ません。
硯副業は、知識も努力も不要に見えますが、その実態は“人任せ”の構造。
自分で理解・行動できない副業に、本当の安心はありません。
💬 被害者の共通点
被害報告を読むと、多くの人に共通点がありました。
- 在宅ワークを探していた
- 誰かに相談せずに契約してしまった
- 「文化的で安心」と思ってしまった
中には
「息子に知られたくない」「恥ずかしくて誰にも言えない」
という声もありました。
しかし、黙っていては被害は減りません。
相談窓口(消費生活センターなど)に連絡することが、最初の一歩になります。
📚 「文化の顔をしたマネーゲーム」

硯を使った“文化副業”は、見た目こそ上品ですが
その中身は人の不安と善意を利用した資金循環モデルです。
- 高額な硯を“資産”として売る
- 架空の人物で信頼を演出する
- 会員紹介で報酬を生み出す
この構造を知ることで、同じ被害を防げます。
副業は、派手な話よりも「理解できる仕組み」を選ぶことが大切です。
「文化的」「安心」「在宅」――
この三つの言葉が揃ったときこそ、最も慎重になるべき。
焦らず、自分のペースで学びながら。
それが、真に“安心できる副業”への近道だと私は信じています。
✍️ 執筆:マナブ
「副業も人生も、理解して続けること。
それが一番確実な“成功”への道です。」